2021年9月20日月曜日

世界SF作家会議

世界SF作家会議

 フジテレビで放送された番組の書籍化。国内外問わずSF作家が参加していて、コロナ禍をふまえつつ未来について話していて興味深かった。コロナ自体もSFチックな事態でいつ終わるか先も見通せない中で、SF作家だからこそ持っている時間スケールの相対的な長さを知ると、目の前のコロナも小さく思えてきて精神的に楽になる作用があった。

 司会はいとうせいこうと翻訳家の大森望。お題が出てそれに対して各作家が持ち寄った考えを広げつつ、いい意味で茶茶を入れていくスタイルなのがオモシロい。単純に作家だけが集められて話すよりも交通整理されることで議論がまとまっていく。あとは大森望のSF読んでいる力の偉大さ。0→1を生み出す作家ももちろん偉大なのだけど、膨大な量を読んでいる翻訳家、批評家はやっぱすごいなと改めて感じた。

 合計3回分が収められていていずれもアフターコロナで世界がどうなっていくのか?という議論がメインになっている。第2回の最後の晩餐トーク(米か麺か?)の各人の答えの変化球っぷりがめちゃくちゃオモシロかった。最後の晩餐トークは誰もが話したことある内容だと思うけどSF作家にかかると、ここまで複雑怪奇になるのかという驚き。何か対象を設定して深く考えるときの作家の底力を感じた。第1回と第3回は真面目な話でコロナがもたらした価値観の変化、そこから予見される人類の未来という話で、こちらも同様に作家たちのエッジの効いた見立ての数々になるほどなーと思ったり、そんなことあるか?などと自分も参加している様な気持ちで読むことができて楽しかった。

 国内外問わずZOOMで会議に参加しているのも時代を象徴している。海外からは今話題の「三体」の作者である劉慈欣、中華SFを世に広めたケン・リュウ、中華SFの新星チェン・チウファン、韓国SFの新星キム・チョヨプ。日本の作家陣は同じ社会に生きているので、なんとなく言いたいことが感覚的に理解できるのだけど、海外の作家はその前提条件が違うのでやっぱり刺激的でオモシロかった。特に劉慈欣のメーターの振り切り具合は、こういう人でないと「三体」は書けないよなぁと感じた。逆に国内SFはほとんど読んだことがないので、本著をきっかけにチビチビ読み進めたい。 

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