世界と僕のあいだにを予習してばっちりの状態で拝読。地下鉄道をモチーフにした小説でオモシロかった。地下鉄道と聞くとコルソン・ホワイトヘッドの小説を想起する。それよりは叙情的な印象だった。また同じ「奴隷制からの脱出」というテーマだとしてもファンタジー要素のベクトルが異なっていてオモシロかった。
あとがきにも書かれていたけど、これが小説1作目とは到底思えない。冒頭かなりファジーな描写続くのでしんどいのだけど、ある強烈にバッドな事態が発生してからはページをめくる手が止まらないほどスリリングな展開が続く。エンタメ性を確保しつつ奴隷制の残酷さをめぐる本人の言論および実在した逃亡者の取材エピソードを盛り込んでおり読み応え十分。なおかつ脚色した小説だからこそ世界観に入り込むことができて奴隷制の理不尽さを少しでも追体験できる。そのような語り口になっているから心痛むシーンがたくさんあった。(特に奴隷を使った狩猟ゲームのくだり)そしてこの時代の話が現在にまで繋がっている恐怖もあった。一方で囚われの女性を男性が救い出すという古典スタイルを明確に拒絶している点は良い意味で今の物語っぽいなと感じた。
テレポーテーション的なファンタジー要素が組み込まれておりモチーフとしての水と母をめぐる描写がとても美しいし、物語がキーとなっている点も含めて好きだった。この描写の巧みさに加えて、とにかくパンチラインが多いので、そこも読みどころだと思う。同じHIPHOP好きとしてアガったラインを引用しておく。
自分がこれとあれと、どちらをより愛しているか。すべてを愛するのかー美しいものも醜いものも、目の前にあることすべてを愛するのかーそれとも、自分の怒りや自尊心に屈してしまうのか。そして僕はこの世の一切合切を選ぶよ、ソフィア。僕はすべてを選ぶ。
僕はこちらで、失ったものたちとともに生きていく。その汚物や混乱とともに。そのほうが、自分の汚物とともに生きていながら、そのために目が見えず、自分たちが純粋だと思っている連中のなかで生きるよりはずっといい。純粋なんてものはないんだ、ロバート。清潔なんてものはない
ブラックパンサーの新シリーズの原作も手がけているらしく、そのシリーズが映画化されて欲しい。
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