2016年1月9日土曜日

ブリッジ・オブ・スパイ



<あらすじ>
1950~60年代の米ソ冷戦下で起こった実話を描いたサスペンスドラマ。
保険の分野で着実にキャリアを積み重ねてきた
弁護士ジェームズ・ドノバンは、ソ連のスパイとして
FBIに逮捕されたルドルフ・アベルの弁護を依頼される。
敵国の人間を弁護することに周囲から非難を浴びせられても、
弁護士としての職務を果たそうとするドノバンと、祖国への忠義を貫くアベル。
2人の間には、次第に互いに対する理解や尊敬の念が芽生えていく。
死刑が確実と思われたアベルは、ドノバンの弁護で懲役30年となり、
裁判は終わるが、それから5年後、ソ連を偵察飛行中だった
アメリカ人パイロットのフランシス・ゲイリー・パワーズが、
ソ連に捕らえられる事態が発生。両国はアベルとパワーズの交換を画策し、
ドノバンはその交渉役という大役を任じられる。
映画.comより)


新年1発目、何を見ようか悩んでいたんですが、
スピルバーグ監督×コーエン兄弟脚本ということで
本作をチョイスいたしました。
スパイとタイトルに入っていますが、
いわゆるスパイものではなく、
ミスを犯したスパイの尻拭いを通じたヒューマンストーリー
といった感じで楽しめました。
スピルバーグ監督の歴史もので
僕が見たことがあるのは、
プライベート・ライアン、ミュンヘン、
シンドラーのリスト等で、
いずれも重ためのものが多いんですが、
本作では脚本がコーエン兄弟ということで
ちょうどいいバランスになっていると思います。
つまり、歴史的な事実としての重みを
スピルバーグが監督として担保し、
会話や人間関係のオモシロさを
コーエン兄弟が脚本家として担保しているということ。
また、「仕事」に対するスタンスや、
「仕事」ができる人とはどういった人なのか、
という普遍的なお話でもあるので、
スパイものを見ない人にもオススメできる作品です。


※ここから盛大にネタバレしながら書きます。

映画の冒頭、鏡に自身を映しながら、
自分の自画像を描くオジさんという
非常に印象的なショットから始まります。
めちゃかっけー!と思って調べたら。
これは Norman Rockwellの"Triple Self-portrait"
という有名な作品に基づいているとのこと。(1)


そのオジさんこそがソ連のスパイ、アベルで
マーク・ライランスという人が演じているのですが、
この人の魅力がふんだんに溢れていると思います。
彼がソ連のスパイであることは物語内で
早々に明らかにされる訳ですが、
さらに説得力をもたらすのは年季の入った顔!
立ち振る舞いはイナタいけど、
しっかりやることはやるという老獪っぷりが最高最高!
前半はトム・ハンクス演じるドノバンが
どういったタイプの弁護士か?
ということをアベルの裁判を通じて描いていきます。
もともと彼は保険の裁判を担当しているんですが、
最初の登場シーンで彼の利口っぷりがよく分かります。
しかも、ここでの彼の考え方こそが
アメリカにとって最高の結果をもたらす
という作りが上手だなーと思いました。
(One, One, Oneが印象的なセリフ)
また、ドノバンは弁護士という仕事に誇りを持ち、
冷戦真っ最中のソ連のスパイを
法律、憲法といった規則に基づき
何とかアベルの死刑を免除しようと努力していきます。
任された仕事に対して立場関係なく、
最大限の努力をするという点は見習いたいところです。
後半はソ連に捕まったアメリカのスパイ救出作戦。
アベルと交換することを交渉するためドノバンは東ベルリンへ。
僕は東ベルリンシークエンスが一番好きでした!
コミカルな部分が多くて、
地元のヤンキーにカツアゲされるシーンや、
アベルの家族と出会うシーンが好きでした。
中川家の漫才のネタにもある、
「大人の笑顔の切り替え」演出に笑いましたねー


その一方で、ベルリンの壁という重たい過去も描かれています。
全然知らなかったんですけど、
ベルリンの壁ってあんな感じで突然作り始められたのか…
という驚きもあったし、
そこに横たわる冷酷な現実も辛かったです。
(世界で一番恐ろしい「世界の車窓から」かもしれません)
後半はドノバンの見事な交渉力、仕事っぷりに
ただただ感服していました。
仕事ができる人は調整力が優れているのだ!
ということがよく分かる作りになっています。
そして、いざスパイ交換!というラスト。
当時のスパイ交換で実際に使用された橋で
撮影されていることもあり迫力満点だし(2)
東ドイツの動向も含めハラハラできる作りになっていました。
また、アベルとドノバンとの絆もグッとくるし、
最後見送ったときにハグされるのか…?
といったところもグッときました。
(ただ東ベルリン側の切なさは笑ってしまいました。)
スピルバーグ作品はあまり見ていなかったのですが、
これをきっかけに少しずつ見ていければと思います。

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