2016年1月30日土曜日

ザ・ウォーク


1974年8月7日、当時世界一の高さを誇った
ワールドトレードセンター。
フランス人の大道芸人フィリップ・プティは、
地上から高さ411メートル、110階の最上階で、
そびえたつツインタワー間をワイヤーロープ1本でつなぎ、
命綱なしの空中かっ歩に挑む。
映画.comより)

ジョゼフ・ゴードン・レヴィット主演ということで
IMAX3Dにて見てきました。
もともと予告編を3Dで見たときから、
このスリリングさは何事!と思っていたので楽しみにしていました。
映像は凄まじい臨場感でVFXでここまでできるのか…
と畏怖の念を抱きました。
言ってしまえば、ただの綱渡りなんだけど、
シンプルであるがゆえに怖かったです。
ストーリーに関しては実話ベースということで、
どこまで本当か分からない部分がありますが、
想定していなかった形で物語が終わったのも好きでしたね。
手作り感満載の作戦と皆で協力して1つの目的を達成する姿を見て、
TVシリーズのスパイ大作戦を思い出したりもしました。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

映画はフィリップが観客に語りかけてくる形で始まります。
そして彼が狂言回しとして、当時を回顧するという
本で語る方法と同じ形式になっています。
前半はなぜ綱渡りを始めたのかを含めた、
彼の生い立ちを描いていきます。
パリ出身の彼は子どもの頃に見たサーカスに惹かれ、
大道芸で生計を立てている青年です。
パリのシーンはモノクロで始まるんですが、
彼が綱渡りをすることになる世界貿易センタービルの記事に出会ったところで
初めて映像がカラーへと変化します。
のちの彼女となる女性と出会ったところでカラーになるのではなく、
あくまで本作の主役は「ビル」だと言わんばかり。
また、フィリップがフランス人ということもあり、
言語設定が映画内で極めて厳格なことにも驚きました。
確かにフランス→アメリカへ移動して実行するので、
ずっと英語をベラベラ話していてもおかしいんですが、
ジョゼフ・ゴードン・レヴィットが
フランス語を話しているのには俳優魂を感じました。
また、この言語の違いを作戦内でも生かしていて良かったと思います。
フィリップの夢を実現するために、
仲間集め、準備、練習を進めていくんですが、
退屈な人は退屈かもしれません。
なぜなら予告で期待した刺激の強い映像までたどり着くまでに
結構な時間がかかるからです。
でも、このDIY丸出しの過程があるからこそ、
クライマックスで手に汗を握る量は変わってくる訳です。
(もし、これが完全にお膳立てされた綱渡りであれば、
たとえ同じビルでもドキドキは半減してたかも)
後半はNYへ移動して本格的な準備といよいよ本番となります。
今では考えられない牧歌的なセキュリティの中、
フィリップやその仲間たちがビルにワイヤーをかけるという
どう考えてもMADなことにマジになってるのが好きでした。
そして決行日が近づくにつれて
フィリップのナーバスさが増していくんですが、
ジョゼフがいい感じに狂っていて楽しかったです。
(とくに夜中の釘打ち→皆に感謝を伝えるシーンが最高)
そしてついに当日!夜中に準備→夜明けとともに
綱渡りというスケジュールな訳ですが、予定どおりにいかないことだらけ。
仕事をしていても、そういったことは多分にあるので、
次元は違うけれど「あるよね~そういうこと!」と共感していました。
準備のシークエンスはオモシロ要素が多い作りになっていて、
僕は皮膚の方が感度高いからといって、
全裸でビルの屋上で踊るのがベストシーンだと思います。
ボロボロの状態ながらもいざ!ということで綱渡りスタート。
まるで自分が綱渡りをしているような臨場感に加えて、
神々しさも携えたようなショットの連続でした。
パニック映画のような展開かなと思っていたので、
そこは意外でビックリしましたね。
息を呑み、キンタマ縮めながらフィリップの曲芸を見守っていました。
最終的に彼は捕まってしまうけれど、
その後は偉大な大道芸人として世間から迎えられ、
彼とビルとのSWEETな関係性も明らかになります。
けれど、そのビルはもう存在しないということを
僕たち観客は当然知っているがゆえに、
とても切ない気持ちにさせられるんですね。さながらビルへの鎮魂歌。
このビルに飛行機が突っ込んで倒壊するなんてことが
全く想像できないと思うけど、それが現実に起こったんだから怖い話です。
911を直接描かなくても、そのことを思い出させ、
忘れないというメッセージを担っている点も興味深い映画でした。

0 件のコメント: