2016年1月9日土曜日

イット・フォローズ



<あらすじ>
捕まった者に死が訪れる謎の存在=「それ」に
付け狙われた女性の恐怖を描いたホラー。
ある男と一夜を共にした19歳の女子大生ジェイ。
しかしその男が豹変し、ジェイは椅子に縛り付けられてしまう。
男はジェイに「それ」をうつしたこと、
そして「それ」に捕まったら必ず死ぬことを彼女に告げる。
「それ」は人にうつすことができるが、
うつした相手が死んだら自分に戻ってくるという。
ジェイは刻一刻と迫ってくる
「それ」から逃げ延びようとするが……。
映画.comより)

アメリカで公開された際にTwitterで存在を知り、
設定がオモシロそーと思い楽しみにしていた作品。
その想像を遥かに越え、めちゃめちゃオモシロかったです!
あらすじにある「ルール」を使ったホラー展開がオモシロいし、
ティーンエイジャーの寄る辺なさに着目した
青春物語としても楽しめるようになっています。
そこに加わるショット1つ1つの美しさが
本当に素晴らしくて見てて惚れ惚れしました!
しかも、そのショットは単に美しいだけではなく、
物語主導でショットに必然性を持たせている点が
上手いな〜と心底思った次第です。

※ここから盛大にネタバレしながら書きます。

あらためて劇場版ポスターにならい、

「それ」にまつわるルールを整理するとこんな風。

ルール1:「それ」は人にうつすことができる

ルール2:「それ」はゆっくりと歩いてくる
ルール3:「それ」に捕まると必ず死ぬ

映画の冒頭である少女を使っての
ルール3のショットの説明シークエンスから始まり、、
引きの固定でワンショット、円を描くように、
少女が「それ」から逃げ惑う姿を描いていきます。
その結果、とんでもなくショッキングな末路を迎えるんですが、
この時点で僕はバッチリ掴まれてしまいました。
前半はジョイが「それ」をうつらされてしまい、
「それ」から逃げていく過程を描いていきます。
本作は時代設定がかなり不明瞭な点が特徴的です。
ジョイの友達は手鏡のようなガジェットで
本を読んでいる一方で誰も携帯を持っている様子がないし、
皆で見ているテレビもブラウン管だし、
そこに映っている映画も古いものです。
ジョイと彼氏が見に行った映画は1963年公開のCharade(1)
映画に集中させるため、
寓話性を高めることを狙っているのかなーと推察。
前半の見せ場としては彼氏から感染を知らされるシーン。
優しかった彼が急に暴力的になりし、
目の前にほぼ全裸の女性が現れて、
「こいつに捕まったら死ぬから!」
と訳分かんないことを言い始め、
以下の追加ルールも明らかになります。

ルール4:最後の感染者が死んだら1つ前に戻る。

つまり、ジョイが死ぬと彼氏に戻ってしまうということ。
また、うつす方法が異性とSEXするということも分かり、
物語は更にオモシロくなっていきます。
単純にSEXして他人にうつしてたとしても、
「それ」の存在を知らずに簡単に殺されてしまえば、
また自分のところへ戻ってくるっていう…
よくこんな地獄めいたこと思いつくよな!
と心底感心いたしました。
監督は夢で見て思いついたそうです。。

Q.この映画の設定はオリジナリティに溢れていますね。
どのように考え付いたのですか?

A.子供時代の悪夢がきっかけなんだ。10歳頃に何度も見た夢だよ。

何かが追いかけてくる夢を見た人は大勢いると思う。
僕の悪夢の中では、それはゆっくりだけど、とにかくしつこいんだ。
僕は学校の遊び場にいて、普通の子が僕の方に近づいてくるのを見ている。
でもどういうわけか僕の夢の中では、“それ”こそが恐ろしい存在なんだ。
僕は走って逃げる。丸々1ブロック走ってから、立ち止まって待つんだ。
しばらくすると、遠くで、その少年が角を曲がり、
僕をゆっくりと追い掛けてくるのが見える。“それ”は誰にも似ていない。
いつも姿・形が違った。もっとあとになって、そんな悪夢を見なくなってから、
この夢を映画にしたら面白いと思ったのがきっかけだよ。
公式サイトより)

中盤からは「それ」からひたすら逃げまくる
サスペンスホラーとして展開していくんですが、
ここでワンショットを多用する意味が明らかになります。
「それ」はゆっくりと近づいてくるというルールを活かし
背後からぼんやりと現れてくる訳です。
フォーカスは主人公に合っているんだけど
ぼやーっと人の姿がみえてきて 、
いわゆる「志村、後ろ!後ろ!」のつるべ打ち!
これを1回見ただけで後のシーンすべてが
気が気でなくなってしまうサスペンス要素の
盛り込み方が発明だなーと思いました。
(日本でリメイクするなら黒沢清を熱望)
インタビューにもあるように、
「それ」は日本の貞子のように定型ではなく、
様々な形となって現れる点もオモシロいポイント。
絶妙にイヤな感じの異形な姿のデザインが本当に秀逸で、
僕は台所で遭遇する小便漏らし全裸ババアが一番イヤでした。。
さらにその恐怖を増長するのが音楽です。
いわゆる「ホラー」な音楽使いでベタなんですが、
音楽のおどろおどろしさは抜群!
来る、来る、来る…来たー!はやっぱり楽しいものですね。
また、青春物語の側面があるのは、
SEXで感染するという設定があるが故だと思います。
ヤリチン、ヤリマン野郎は地獄に落ちるんだ!
とでも言わんばかりに、
超モテモテの男とナードな幼なじみポールの対比が良かったです。
ホラー映画の殿下の宝刀、別荘のシークエンスもあるんですが、
別荘が山の中ではなく海沿いにあったり、
別荘内で巻き起こる悲劇というクリシェを飛び越える、
その軽々とした展開にも好感を持ちました。
終盤は逃げっぱなしだった「それ」と対峙するシークエンスが
設定的にツッコミたくなる点もありましたが、
アイデア盛りだくさんで最高最高でした!
時代背景と同様、場所の情報もほとんど提示されないんですが、
車で徘徊している街並や劇中で8 mileに言及するシーンからして、
デトロイトであることは間違いないと思います。(2)
(実際のロケ地はデトロイトとクレジットされていました。)
そのデトロイトの街の荒廃っぷりを
強烈にかっこいいショットで捉えていることで、
物語が重厚さをまとっているようにも感じました。
同じく近年のデトロイトの街並を使用した作品として
ライアン・ゴズリンズが監督を務めた
ロスト・リバーを思い出しましたが、
本作の方が物語を補強する必然性を持っていると思います。
そしてラストはナードなポールの泣ける漢気からの
極上甘酸ショットからのタイトルどーん!でサムズアップ!
まだまだ見落としている点も多いと思いますし、
語りしろある映画なので早くDVDで繰り返し見たいです。

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