2016年7月31日日曜日

深い河

深い河 (講談社文庫)


沈黙で俄然気になり始めた遠藤周作の作品。
本作も又吉さんの著書で沈黙とセットで紹介されていて、
沈黙が超オモシロかったので読むしかないでしょ!
ということで読んでみました。
結果こちらも超オモシロイ作品でした。
深い河=ガンジス川でありながら、
ヒンドゥー教に閉じず幅広い宗教に関する話になっています。
メインの登場人物が5人いて、
彼らはインド旅行ツアーを共にする人で群像劇として描く。
それぞれ異なる背景があるものの、
自らの内なる喪失感を埋めるかのように、
インド、深い河へと誘われる姿がオモシロイんですよね。
喪失感のグラデーションとして、
登場人物が5人用意されていると。
1人は妻を亡くし彼女の輪廻転生を願い、
1人は飼っていたペットが自分の身代わりに
亡くなってしまったと感じ、
1人は第二次大戦時の記憶を引きずって、といった感じ。
これらがサブストーリーとして描かれ、
メインとなるのは大津という神父と
彼の大学の同窓である美津子。
大津というキャラクターが物語の象徴で、
彼はキリスト教の神父でありながら、
キリストが絶対的な存在だとは考えておらず、
神はそれぞれの人々の心の中に転生しているのである。
という考え方をしています。
作品中に「キリスト」の文字が一言もなく、
「あの人」や「玉ねぎ」といった言葉に置換されており、
物語の内容と文体の一致という点で興味深かったです。
(玉ねぎと書かれた理由は自分で読んで確かめてください。)
彼へのカウンターとして強烈な無神論者として、
美津子という人物が配置されている構成。
「宗教なんて信じちゃっておバカさんね!」
というスタンスだった彼女が人生を生きる中で、
自分がどこにいて何を欲しているのか分からない、
と思い始めたところで大津の存在が気になっていく、
その話運びがとにかく素晴らしかった!
宗教を信仰するとまではいかなくて、
何かを信じ始める …みたいなバランスが好きでした。
いきなり0が100になることなんてそうそうないんだから。
まるでキレのいい映画を見るようなエンディングも最高最高!

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