2014年1月2日木曜日

キューティー&ボクサー



これも去年の見逃していた分。
予告も見ていたし、主人公であるギュウチャン
ライブペインティングをNHKのあさイチで見ていたので、
興味を持っていました。(番組内での異物感が凄まじかったけどw)
さらに想田監督のpushもあったので、当然のごとく見に行きました。
前衛芸術家であるギュウチャンこと篠田有司男と、
その妻である乃り子のNYでの日常生活に密着したドキュメンタリーです。
2人のアーティストとしての側面はもちろんなんですが、
一夫婦としての側面がとんでもなくオモシロい作品でした。

ギュウチャンは齢80にして、現役バリバリのアーティスト。
ボクシングのグローブに絵の具つけて、壁を殴って描いたり、
ダンボールで作ったオートバイというのが代表作品。
40歳のころに渡米して、ずっと一線で活動しています。
妻の乃り子も絵を描くアーティストなんだけど、
彼女は妻であり、一児の母でもある。
そこでの葛藤も踏まえつつ、NYでの生活および
これまでの2人の歴史を振り返りながら、話は進みます。
NY在住のアーティストという言葉の響きだけだと、
優雅な生活を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、
実状は全く異なっていて、家賃や光熱費の支払いも
ままならないくらいの生活をしている。
ギュウチャンはその現状を認識していないけど、
家計を担っている奥さんは必死な訳です。
それが一番顕著なのが、グルノーブル美術館のバイヤーがやってくるシーン。
一番、現実問題が露呈するから見てて辛かった。

ギュウチャンは自分勝手に生きてきた一方で、
奥さんは妻としての役割や、母としての役割を果たしながら生きてきた。
アーティストにとって、「妻」や「母」の役割をこなすことの
辛さや重みを彼女の語りと当時の映像を交えながら描いています。
重要な役割を果たすのが、乃り子が劇中で描いている作品。
彼女とGYUZOのこれまでを日本絵巻っぽいタッチで描いている。
これをアニメーションにすることで、
単なる過去の回顧になっていないのがオモシロいところです。

ある種の萌えというか、おじいさん、おばあさんを
愛でる気持ちが初めて僕の中で芽生えましたw
とにかくphotogenicでかわぅいいい!
冒頭の誕生日のくだりしかり、
何気ない夫婦の日常なんだけど、どこか愛おしく感じる。
この作品の最大の特徴が2人の話す言葉で、
NY在住歴が長いので、日常会話で日本語と英語がないまぜ。
高等なルー大柴みたいになっていますw
終盤で放たれる「I need you」で、僕は泣きました。
一番好きだったのは、
ギュウチャンがキャシー塚本ばりに、ご飯を作るシーン。
作り方から食べた後の奥さんのリアクション含めて笑ってしまいました。
こういった日常描写の細かい積み重ねによって、いつのまにか2人の虜に。
そっからのラストショットの神々しさは唯一無二。

色々と述べてきましたが、この2人の生活は豊かに見えるんですね。
人生におけるプライオリティ論になったときに、
お金だったり、時間だったり、人それぞれ回答があると思いますが、
少なくとも僕はこの映画を見た限り、
一番はお金じゃないなーと感じています。
(彼らはもちろんアートでしょう。)
そして、結婚した赤の他人が2人で生きていくことの
楽しさや大変さがよく分かりました。
もちろん、クリエイターにもオススメですが、
誰にでもある普遍的な日常の話でもあるので、
見た目で敬遠せず、是非見てくださいませ。

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