2016年2月13日土曜日

不屈の男 アンブロークン



アンジェリーナ・ジョリーの監督第2作。

ローラ・ヒレンブランド著のノンフィクションを原作に、
1936年のベルリンオリンピックに出場した陸上選手で、
第2次世界大戦中に日本軍の捕虜になった米軍パイロット、
ルイス・ザンペリーニの体験を描いた。
映画.comより)
2014年にアメリカで公開され、
日本でも1度公開されかかったものの、
「反日映画を公開するな!」という
抗議活動に配給側がビビッてしまい見送られた本作。
最終的にビターズエンドが配給を担い、(1)
渋谷のイメージフォーラムのみで上映されています。
これから順次全国公開されるものの、
アンジェリーナ・ジョリー監督×コーエン兄弟脚本で、
この規模での公開は異例と言って差し支えない状況だと思います。
(イメージフォーラムでユニバーサル、
レジェンダリーのロゴを見るとは思わなかった…)
見えない大衆の圧力に屈してしまう
気持ちの悪い今の日本の状況とは打って変わって、
本作は戦争を通じた至極真っ当な
ヒューマンドラマでオモシロかったです。
これを見て反日だ!と言っている方は
オツムが足りないのか?と言わざるを得ません。
多種多様な価値観がある中で、
それを許容することの必要性を改めて感じました。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

冒頭でtrue storyと銘打ちゼロ戦との空中戦から始まります。
このシークエンス自体も当然ですが、
撃って撃たれての繰り返しで
決して一方的な描写ではありませんでした。
さすがにハリウッド製ということで
アクションシーンはかなり迫力がありましたし、
主人公ルイスが所属するクルーの
チームワークの良さが分かります。
前半は主人公のルイスの子どもの頃〜戦争に行くまでと、
戦争が始まり、彼が乗っていた飛行機が
エンジン故障で太平洋を漂流するシーンで構成されていました。
ルイスはオリンピックに出場するレベルのランナー
ということが彼を特徴づける重要な要素になっています。
つまり、彼がいかにunbrokenでタフな男か、
マラソンのエピソードを中心に描かれていました。
僕はオリンピックのマラソンシーンが好きで、
レース終盤に猛烈な勢いで追い込むルイスの姿が
とてもかっこいい!と思いました。
そして漂流シークエンスが始まります。
原作でそれが事実であるということもあるのは分かるんですが、
正直このシーンが長くて退屈。。
分かりきった「漂流あるある」が長い時間かけて、
披露されるだけなんですよねー
(彼がタフであることを描きたいのは分かるんですが)
またサメがなぜか大きくフォーカスされていて、
ジョーズを彷彿させるような展開もありましたが、
本作でわざわざ描く必要があるのかと感じました。
唯一好きだったのはカモメを生食いするシーンで、
ここは完全にコーエン兄弟っぽい笑いで好きでした。
生きるか、死ぬかギリギリのところで、
日本の船に見つかってルイスは捕虜になります。
この捕虜となった後半が本作の最大の見所。
はじめに島に連れて行かれて、そこで軽めの拷問。
捕虜を全身裸にさせるシーンがハラハラさせる展開で、
とてもオモシロかったですねー
(斬首の文化があの時代に存在したのかは疑問だけど …)
そこから東京にある大森収容所へ送還。
ここにいるのがギタリストのMIYAVI演じる鬼軍曹渡辺。
間違いなく彼が本作のMVPでしょう!
最初の登場シーンにおける「Don't look at me」は
理不尽極まりなく彼のmadっぷりがよく分かります。
(顔からも漂うたっぷりなSっ気もナイス!)
過酷な収容所での生活から
一度抜け出せそうな機会がルイスに訪れます。
それはラジオ局で日本の優勢を伝えるという仕事。
unbrokenな彼は当然嘘なんてつけない!と断ります。
このかっこよい展開からの地獄がまた凄まじくて。
大森収容所の囚人全員にルイスの顔を殴らせるというね、、
当然囚人たちは躊躇するわけなんですが、
それを見た渡辺は別の弱っている囚人をボコボコにして、
「テメーらが殴らないとコイツボコボコにするで!」
と脅し、ルイスは殴られ続けるというねー
精神攻め立て系の日本のイジメ体質を感じますよね、
連帯責任という名の同調圧力。
悪魔のような渡辺も出世、大森収容所を出所して、
やっと彼からエスケープすることになります。
また東京空襲の場面があるんですが、
ここのショットの力強さは
撮影監督であるロジャー・ディーキンスの力かなと。
終盤ルイスは大森収容所→直江津収容所へ送還されます。
ここで渡辺が再び現れるというまさかの天丼展開。
ガキ使の「笑ってはいけないシリーズ」っぽくて、
少し笑ってしまいました。
白人の捕虜たちが炭鉱で真っ黒になって働く姿は
人種問題を意識しての演出なのかなーと思ったりしました。
ラストも渡辺vsルイスになる訳ですが、
ドヤ展開で乗り切れませんでした。。
アメリカ最強!なのは拭いきれないと言いましょうか。
けれど、これが決して反日という訳ではないことは明らかです。
本作は事実ということもあり、
終盤にテロップで戦後の人生が語られる訳ですが、
かなりビックリする内容でした。
こんだけの仕打ちを受けたら、
当然ボコボコにしたるわい!となりそうですが、
キリスト教に本格的に入信したこともあるのか、
「許し」の姿勢が凄まじいなと思いました。
(PTSDやアルコール依存症もあったみたいですが(2))
 戦争自体は互いが暴力を振るい合うものであり、
その勝敗に関わらず加害者/被害者の両面を必ず持つと思います。
大事なのは、その戦争の後をどう生きていくのか、
同じことを繰り返さないのか、ということです。
「こんなことはなかった」とか
「敵の方がもっとひどいことをしていた」なんて、
幼稚な発言、議論を大の大人がしていると悲しい気持ちになります。
(歴史を専門にしている人が史料に基づき
行うべきことだと僕は思っています。)
賛否両論あるかと思いますが、
とにかく見ないことには始まらないと思います。
アンジーのインタビュー が本作を分かりやすく、
位置付けていたので読んでみてください→(3)

0 件のコメント: