2025年7月21日月曜日

それがさびしい


 先日、植本一子さんの写真展で買った会場限定のZINE。ホッチキス留め、A6サイズの手作りのコンパクトなもので、その外見に呼応するように読者に語りかけるような繊細なものだった。

 飼い猫のニーニが病気を患っており、余命幾ばくかという話は別のZINEでも読んで知っていたが、実際にその猫を看取った様子が克明に記録されていた。以前であれば、日記でタイムラインを追うような形式になっていたと思うが、エッセイという形になり、実際の猫の様子と植本さんの考えがシームレスに描かれている。猫の闘病記は『にがにが日記』で初めて読んで、人間さながらの介護が必要なものだと初めて知ったわけだが、ニーニの場合は写真でどういう状況なのか、具体的には片目が摘出されて、顔が腫れているという状況まで知っているので胸にくるものがあった。

 そんなエッセイの中でも、一番心に残ったのは選挙のことだった。今回の結果は正直目も当てられない。前回の衆議院選挙のときに収録したポッドキャストを聞いていると、たった半年前なのに参政党に対して半笑いで楽観視していた。本当に加速度的に何かが始まっている、もしくは壊れているのかもしれない。本著では、自分の心に余裕がなかったり、立場が弱いとき、人はどうしても自分よりも弱いものをはけ口にしてしまうことについて、猫の介護を通じて書かれており、今こそ読まれてほしい。

 肝心の写真展も素晴らしかった。本で読んでいた馬たちの新たなビジュアルをたくさん見ることができて、馬の存在感を堪能することができた。写真展はcommon houseという本屋さんで行われているのだが、経営されているお二人と植本さんが邂逅したのは一緒に出店したZINEFESTで、私もその場に居合わせていた。そして、会場設営はこれまた文フリで仲良くなった予感の高橋さんなので、人の縁を勝手に感じて感慨深かった。

 会期は7月30日までなので、このZINEも含めて一子ウォッチャーの皆様はチェックされるとよろしいかと思います。本屋さんは居心地も、品揃えも二人の個性をたっぷり感じられて最高でした。千歳烏山駅からだと徒歩20分くらいですが、お店の近くにレンタサイクルの駐輪場があるので、駅からレンタサイクルに乗っていくのがおすすめです。



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