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対談録 太田の部屋(1)書く人の秘密 つながる本の作り方/太田靖久・植本一子 |
私のZINEメンターである植本さんが、ZINE作りについて語っている対談本。私が個人でZINEを作り、右も左もわからない中で、文学フリマへ誘っていただき、売る姿を背中で見せていただいたわけだが、本著ではZINE作りのマインドセットさらには具体的なことまで、植本さんの製作におけるノウハウが明かされていて勉強になった。
本著には、2023年と2025年に行われた二回分のZINEづくりに関する対談が収録されている。植本さんはこれまでの著作において、自分の気持ちについて言葉を尽くしてきた人であるが、この本では製作の背景にある考え方などが対談形式ながら体系的にまとまっている。そもそもなぜ写真家だったところから文章を書くようになったのか、書く際に大事にしていること、本の受け止められ方についてなど、率直に語られていた。
対談内の質問にあったように、植本さんの本を読むと「ほんとうのこと」が書かれているという印象を抱く。それは植本さんが書くことについて真摯に向き合っている結果であり、同時に「自分を知ってほしい」という動機が、打算ではなく純粋な欲求から出ているからこそ、読んでいる人の心を掴むことができるのだと改めて気づかされた。
ZINEを自分で作ることの難しさを実感している今だからこそ、各プロセスを細分化、解説してくれている点がありがたい。自分で作ってみてわかったことだが、すべてを自分で担うことは本当に大変なことだ。ZINEの製作、販売にあたっての各プロセスで考えることは山ほどある中で、実際に結果を出してきた植本さんのノウハウが惜しみなく開示されており、ZINEブームの今、参考になる人はたくさんいるはずである。私自身も、在庫バランスや宣伝の難しさを痛感している真っ最中で、やればやるほど植本さんへのリスペクトが増すばかり。その理由は本著を読めばわかる。
そして、これだけ植本さんから、たくさんのノウハウやの考えを引き出している対談相手の太田さんの質問力も特筆すべきことだろう。植本さんの著作を踏まえながら、表面的なところから深いところまで縦横無尽に確認するように聞いている様は、ポッドキャストを運営する身として勉強になった。そして、太田さんが販売イベントで意識していることが、とても参考になった。具体的には「買います」とお客さんが言ってくれた後に、どう着地させてお客さんの購入時の「寂しさ」を引き取るか。ここで「寂しさ」というワードチョイスがまさに小説家!と思ったし、私はとても苦手なので、意識していきたいところ。現在、三作目を鋭意製作中なので、本著を参考にしつつ引き続き頑張りたい。
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